連載第三回目は、北海道・札幌という、ダイビングシーズンがいたって短い場所で、
自店をNAUIの最高峰、プロプラチナスクーバセンターまでに育てた、
「POSEIDON」会長 橋 金作氏(NAUI INSTRUCTOR #3523)です。
NAUI50周年、並びにNAUI JAPAN40周年おめでとうございます。
40年前、NAUI JAPANは、法人格もない任意団体からスタートし、現在の株式会社ナウイエンタープライズに発展してまいりました。しかしその間には大変な苦労があり、困難を乗り越えてきたことは忘れることができず、関係者の皆様の努力に敬意を表します。
NAUI JAPAN40年の歴史のうち、私が在籍したのは31年であり、私のインストラクターの歴史であり、思い出でもあり懐かしく思います。
私がダイビングを始めるきっかけは、1960年18歳のとき、亡きアメリカのケネディ大統領が、これからのフロンティアは「インナースペースの海洋開発とアウトスペースの宇宙開発」であると宣言し、アポロ計画がはじまり、宇宙と海洋の利用開発が叫ばれました。私はそれに刺激を受け、海洋を目指そう、好きであった素潜りからスクーバダイビングへ向かい、当時のアクアラングを模索しました。北海道ではダイビングを始めるにも器材も、潜水知識も乏しく手探りの中、ようやく23歳のころ器材を買うことができ自己流で始めました。当時の北海道のダイビングは、残圧計もなく呼吸が渋くなったら浮上する、緊急浮上が日常的でありました。その後講習を受けNAUI Cカードを取得し、その後30歳のとき、伊豆海洋公園でITCに参加、インストラクター認定されメンバーとなることができました。その当時のITCを思い出すと、受講資格は水泳400m10分以内、平泳潜水50m、3点ベイルアウト、3呼吸50m平泳潜水‥でありました、中でも思い出すのは、夜間各ポイントを回りエントリー地点へ戻るコンパスナビ潜水でしたがほとんどのチームが暗闇の中、迷い浮上でしたが、私どもバディは無事戻りトップで優勝したことです。
それと合わせて、沖縄海洋博開催が叫ばれる1973年の春に脱サラ、北国でのダイビング専門店の経営を始めました。しかし開店時PRのお金が無く、スクーバ装備の姿で札幌の街中の三越前交差点で、スクーバ講習のパンフレットを配りPRをしたことから始めました。その後62歳で引退するまでの31年間、ダイビング゙にかかわる指導した生徒数は、漁業者も含め、およそ2000名以上になると思います。更にITCコースデレクターを務め、北海道を中心に20数名の後輩を指導、1988から90年までNAUI JAPANの理事に就任し、中央から離れた各地方の声を理事会等へ届ける役目を務めました。
北国の雪降る札幌での経営は難しいと言われながら、創業したダイビングシュップ「POSEIDON」は、今ではNAUI加盟店の最高峰、「プラチナスクーバセンター」に認定され、NAUIから10回以上の表彰を受けるほどになることができました。この間NAUIを始め多くのダイバーの皆様には、大変お世話になり感謝いたします。
2004年、30年記念表彰を機に62歳で現役を去り、NAUIを引退し、今は67歳になり後輩に道を譲り静かに潜りを楽しんでおります。
講習を始めた37年ほど前の昔を思い出すと、受講生徒はほとんどが男性であり、最近のように女性ダイバーが多くはなく1割程度でした。しかし男女ともに兵ぞろいで、ベーシック(スクーバダイバー)レベルで10m素潜りが当然の海洋講習をしておりました。10m素潜りの証に海底から何か持ってくるようにと言ったら、漬物石のような大きな石を持って浮上してきた女性もおりました。今思うと驚きです。海洋実技講習は午前中がスキンダイビングで、午後にスクーバ指導をして、泳力を徹底的に鍛えました。今でもダイビングは泳力と素潜りが基本であると私は思います。最近の泳力不足のダイバーを見るとこれでよいのかと心配をいたします。
・今後に望むことと。。。
私は、37年前ダイビング業界は将来大きく発展し、大きな事業となると夢を持っておりました。しかし最近、この業界から昔のような夢と情熱、ビジョンと活気を感じられることが少なくなり残念に思います。これは多くの私ども先輩が趣味の延長のアマチュア的な感覚でインストラクションを行い、ビジネスとして真剣に取り組んでこなかったからではないかと思います。
良く「趣味と仕事が両立してよいですね。」と聞かされますが、ダイ ビング事業は趣味の延長でなく、趣味と実益が叶うような甘い考えは捨てるべきです。
お客様は自分自身を楽しませるために大切なお金と時間をかけているのであって、インストラクターを喜ばせ満足を与えるために存在しているのではありません。お客様の満足のためにお金と時間をお預かりしているのです。一日のダイビング講習で午前、午後通じても潜水時間は2時間程度とわずかです。しかし費やしている時間は日帰りで家を出てから帰るまで、10時間以上かかっており、残りの時間、インストラクターは生徒、お客様に何を提供しているのでしょうか? 今一度個々のインストラクターが自分なりのオリジナリティーでお客様満足を考えなければなりません。そしてインストラクターは、お客様、生徒の喜び楽しむ姿を、後ろから見て満足すべきです。
これから先、インストラクターの使命は、ダイビング技術の指導は勿論のこと、お客様、生徒へ「海・人・生物との交じ合い」「スポーツダイビングからの健康」「自然に触れる心の安らぎ」との出会を提供して、喜びと感動を提供するビジネスマンであり、その仕事職業に誇りを持ち、豊かさを享受できるようなダイビング指導をめざしていただきたいと願います。
NAUI ♯3523 橋 金作