連載第11回目は、来年、OPEN25周年を迎える「むねダイビングショップ」(静岡県・伊東市)、そのオーナーであり、「都市型のプロショップ」と「現地リゾート型ショップ」の両方を見てきた、
林 宗行様(NAUI#7482)に、「伊豆に定住してから見えてきた、現在のダイバー事情」を寄稿頂きました。
「むねダイビングショップ」も25周年を迎えることができ、二重の喜びを感じています。1985年4月に東京・荻窪に都市型ショップをオープンしたときは、講習希望者が年間で10人もいない状態からのスタートでした。ダイビングブームもあり、次第に講習生が増えて忙しくなってからも、NAUIの一員として十分に時間をかけた質の高い講習を心がけてきたつもりです。お陰様でスクール卒業生の事故も無く、リゾートでも、むねダイビングショップで講習を受けたダイバーは、信頼して受け入れて貰うことが出きたと思っています。現在は、ファンダイビングの受け入れ側として、6年前から立場を変え、伊東市富戸でダイビング業務に従事しています。
東京時代は、エントリー講習とステップアップに力を入れて活動して来ましたが、富戸では、ステップアップコースとファンダイビングが主です。そんな中で、感じたことを言わせて頂きます。昔も今もエントリーレベルの講習内容は、それほど変わっていないと思いますが、富戸で受け入れていると、指導団体に関係なくダイビング知識の不足が感じられる場合があります。ファンダイビングを楽しむには十分な技量を持っているダイバーが大半ですが、ダイビング用語や緊急手順などの実技を忘れてしまっている方も多く見受けられるのです。
オクトパス呼吸は「やったことがあるかな~」程度、緊急スイミングアセントや潜水障害についての知識は言葉としても忘れてしまっている方がいます。普通にファンダイビングを楽しんでトラブルもなければ全く気付かない、チェックしない技術や知識です。しかし、いざというときに役に立たない講習や知識では、ダイビングの安全性は担保出来ないのです。この点を改めて見直して、エントリーレベルの講習を充実させて頂ければと思っているわけです。
また、どんなに講習をしっかりとしても、反復されなければ身につかないのも事実です。講習を終えてから数年間ダイビングを継続している方ですら、緊急手順など忘れていたりして対応できないことがあります。緊急手順は1つの例ですが、同じように普段使われないダイビング技術を1年に1回くらいは、ファンダイビングに参加して頂いたときにでも改めて再講習が出来れば安全なダイビングに繋がるのではないかと考えています。
緊急手順などの実技を、ファンダイビング中にチェックすることはなかなか難しいのですが、ちょっとした工夫で、遊び感覚で練習して貰うことも出来ます。ステップアップコースの中で、改めて身に付けて貰うことも出来ます。「むねダイビングショップ」では、リフレッシュプログラムとして、講習の要点を再確認して、忘れてしまった実技の再講習、もしくは習っていないかもしれない実技の総点検もしています。
フリーフローのコントロールを知らない人や緊急スイミングアセントをやったことがない人など、いろいろ現れてきます。そういう人たちに再講習の場所を提供していくのもNAUIの質の高さに繋がっていくのではないかと思います。NAUIも刻々と変わる時代の流れの中でつねにリーダーとして、ダイビング業界で活躍できるよう質の向上に努めて頑張って頂きたいと思います。質を維持するためには新しい講習のアイデアも必要です。また、今までの50年を振り返って、つぎの50年に向けて見直すところは見直してNAUI本来の力を発揮していくことを期待しています。NAUIダイバーの良さは、「質の違い」という一言で表現でき、それを誇れるようになりたいものです。NAUIが大好きで堪らないメンバーがいつまでも活躍されることを願うと共に、メンバーを支えるNAUIエンタープライズの今後の発展を祈念いたしております。
林 宗行(NAUI#7482)