海の中には奇妙でユーモラスな生き物が、まだまだたくさん生息しています。
今回紹介するのは、まさに今の季節にぴったりの魚です。
寒い冬の冷たい海の中では、ユーモラスでお団子のような見た目の魚に出会うことができます。その名も「ダンゴウオ」!
クリっとした目に、愛らしい口元。そのユニークな表情にほっこり癒されること間違いなしです!冬の寒さに負けず、海の中の可愛い「ダンゴウオ」に会いに行ってみましょう!
NAUI × ずかんくん
沢山知って、ダイビングを
もっともっと楽しんじゃおう!
はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!
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第11回 ずかんくんコラム
「ダンゴウオ」
ダンゴウオはどんな魚?
(体長)2cmほど
水深20m以浅、沿岸の岩礁域やタイドプールに生息します。
体に骨質のような突起はなく、下アゴにひげのように見える3対の感覚器があります。
ダンゴウオの仲間は全体的に小型の種が多く、皮膚に「骨質コブ状突起」や「皮質突起」を持つ種が多いことも特徴の一つです。また、ほとんどが底生で大陸棚や、大陸斜面上部に生息しています。
しかし中には、ホテイウオのように生活史の大部分を海底から離れて暮らしている種もいます。
・「タイドプール」・・・潮だまりのこと
いろんな色のお団子
緑、ピンク、赤黄色などいろいろな体色をしているお気に入りのダンゴウオを探して、カメラで撮影することもダイビングでの楽しみの一つです!
ダンゴウオは動き回る魚ではないので、思う存分カメラ撮影を楽しむことができます。
様々な体色は、自然下では海面など、周りの風景に溶け込む「保護色」であると考えられています。ダンゴウオはあまり動かない分、工夫で生き抜いています。
ダンゴウオにはいつ会える?
ダンゴウオには冬から春にかけて海中で出会うことができます!ダンゴウオの仲間は割と冷たい海を好むのですが、比較的暖かい南日本にも生息しています。
幼魚には天使の輪がある
豆粒のような大きさで、1cmに満たない幼魚の頭にある白い輪は、ダイバーの間では「天使の輪」と呼ばれており、とっても人気でキュート!!
残念ながらこの天使の輪は、成長と共に消失してしまいます。
カイメンに張り付くことができるダンゴウオのヒミツ
左右の腹ビレがくっついて吸盤となり、この吸盤で岩場などに張り付きます。
水族館では、水槽の壁面や、水槽内に設置された球状のオブジェなどにピタッと張り付く姿を観察することができます。一方、自然下では海藻などに張り付いているます。これは海藻などに張り付くことで、流されないようにしているからです。体力の消耗も抑えられる戦法で厳しい自然下を生き抜いているのです。
生活の場所を大きく変えず、その場に張り付いて生活するので、一度発見すると割と同じ場所で何度も観察しやすいです。この観察しやすさもダイバーに愛されているポイントです。
ダンゴウオの繁殖
ダンゴウオの産卵期は冬の終わりから初春頃です。
ダンゴウオの繁殖は、オスがフジツボの殻などに産卵巣を作り、その巣にメスが産卵します。
そして産みつけられた卵を、オスは孵化するまで守ります。オスの第一背ビレはメスよりも大きく、卵の保護に役立っていると考えられています。
ダンゴウオのお父さんはイクメンなのですね!
日本海側と太平洋側で別種?
(クリックで詳細を表示)
「ダンゴウオ」(太平洋側)
成熟サイズが著しく小さく、最大体長が2cmほどです。
千葉県~三重県の太平洋沿岸に分布します。
「サクラダンゴウオ」(日本海側)
2月~4月の産卵期に浅海に現れ、桜の開花時期と重なるのが和名の由来です。
眼の後方と両眼間に感覚孔があることなどから、ダンゴウオとは異なります。
秋田県~兵庫県の日本海沿岸に分布していて、普通は水深100m前後の場所に生息します。
他にもたくさんいるダンゴウオの仲間たち
(クリックで詳細を表示)
「イボダンゴウオ」
(体長)約10cm
(水深)150m~500m付近に生息しています。
(分布)北海道の太平洋岸から米国ワシントン州沖
形は球状で、たくさんのコブ状突起に覆われています。
眼の間には4列のコブ状突起が並んでいます。
腹ビレは吸盤型で、第一背ビレは高く多くのコブ状突起があります。
下あごの腹面は小さなコブ状突起に覆われます。鼻孔と下あごの感覚孔は短い管状です。
「ナメダンゴ」
(体長)約8cm
(水深)120m~220m付近に生息しています。
(分布)オホーツク海、タタール海峡、千島列島周辺、カムチャッカ半島西岸
イボダンゴと、とてもよく似ています。
鼻孔と下あごの感覚孔が長く伸び、第一背ビレにコブ状突起がほとんどない点が異なります。
「コンペイトウ」
(体長)オス約7cm メスは約12㎝
(水深)80m~150m付近に生息しています。
(分布)北海道周辺、日本海、千島列島周辺、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾
体は球状で、背ビレは2基あり、腹ビレは吸盤状です。オスは体に骨質のコブ状突起がたくさんありますが、成長するにつれて少なくなります。第一背ビレは明瞭で皮膚に覆われます。メスは体のほぼ全域がコブ状突起に覆われます。第一背ビレは低くて、成長するにつれ、コブ状突起に隠されます。
「フウセンウオ」
(体長)約6cm
(水深)90m~150m付近に生息しています。
(分布)北海道周辺、日本海、東シナ海北東部、千島列島周辺
体には大小のコブ状突起がたくさんあります。腹ビレは吸盤状です。
下あごの腹面には突起や皮弁がありません。第一背ビレは高く、コブ状突起はありません。
「セダカダンゴウオ」
(体長)オス約40cm メス約50cm
(水深)300m程度まで
(分布)北大西洋
大陸棚の岩礁に棲み、流れ藻でも見られます。クラゲ類、底に棲む小動物、小魚などを食べます。英名の「ランプサッカー」の呼び名の方が有名で、卵はキャビアの代用品として活用されます。
食材として地域で愛される「ゴッコ汁」
(クリックで詳細を表示)
「ホテイウオ」
(体長)30cm以上
(水深)沖合の表層から水深100m付近の中層域を漂って生活しています。
(分布)神奈川県・島根県以北の日本沿岸、オホーツク海、ベーリング海、北米海岸
ダンゴウオの仲間の中では大きな体をしている。
大陸棚の岩礁に棲み、腹ビレが変化した吸盤で岩に張り付いています。産卵期は冬です。
ホテイウオのオスは産みつけた卵を守ります。
北海道では熱湯をかけて粘液を取り除き、ぶつ切りにした身、卵巣、肝臓にネギを加えたしょうゆ味の「ゴッコ汁」が、地域の郷土料理として親しまれています。ホテイウオは冬季に刺し網などで漁獲されます。
最後に
イラストで紹介してきた、たくさんのダンゴウオの仲間たちですが、その可愛さをイラストで誇張しているわけではありません。実際のダンゴウオはイラストよりももっともっと愛らしく表情が豊かなので、ぜひ実際の海の中に会いに出かけて見てくださいね!
寒い冬の中でも、ほっこり温かい気持ちになれるかもしれませんよ。
・北海道の魚類 全種図鑑(北海道新聞社)
・小学館図鑑NEO 魚(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本魚類館(小学館)
・ポプラディア大図鑑 魚(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 魚(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 魚(講談社)
・山渓ハンディ図鑑13 改訂版 日本の海水魚(山と渓谷社)
・山渓カラー名鑑 日本の海水魚(山と渓谷社)
・世界で一番美しい海のいきもの図鑑(創元社)
・日本産魚類生態大図鑑(東海大学出版会)
・日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会)