連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
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はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第22回 ずかんくんコラム 
「深海の海洋生物たち」(前半)

「深海の海洋生物たち」(前半)

※「ツイヨー」とは静岡県焼津市の漁師さんの合言葉で、「魚よ!ついてこいよー!」という祈願の意味があります。深海延縄漁の場でも漁師さんはこの言葉で、豊漁の願いを込めます。

<はじめに>

私たちの住む「青い惑星・地球」。
この星の表面積の約70%は海に覆われています。
そして、海のほとんどが「深海」と呼ばれるエリアです。
あまりに広い深海ワールドは、いまだ多くの謎に包まれています。
水深200mより深い場所を「深海」と定義していますが、レジャーダイビングで、一般的に潜ることができる水深はせいぜい40mほどで、水深200mというと到底生身の体では潜ることが敵わない世界です。
海を深く潜ると高い「水圧」が私たちの体にかかります。
深海世界の水圧の力は、私たちが生きていけないほど強く、たとえダイビングで潜ったとしても、体にかかる水圧の力で、命を落とすことになります。
「高い水圧」だけではありません、ほかにも「低温」「暗闇」が生命の活動を阻みます。
そんな私たちにとって過酷なエリア「深海」を調査すべく、シーラカンス先生が、僕たちのために「時空転送装置Pro」と「深海調査艇サブマリン6500Plus」を作ってくれました!
そして見つけた海洋生物のデータは「リモートロボ・Typeアビス」が教えてくれます。
これで深海エリアにどんな海洋生物が生息しているのか調査に行くことが可能になりました!

<ずかんくん深海調査ギア>

  • ① 「時空転送装置Pro」
    一瞬で別の場所へ移動することができる装置。
    「深海調査艇サブマリン6500Plus」とリンクポータル接続を
    行うことで別の場所へ緊急ワープを行うことも可能。
    ただしその場合、ワープ先としてどの場所へ出るかは不明。

  • ② 「深海調査艇サブマリン6500Plus」
    深海6,500mの深海域まで調査することができる、
    「高水圧」「低水温」に耐えることができる深海探査艇。
    シーラカンス先生のさらなる改造により、
    従来の6,500mよりさらに深い深度まで潜ることが
    可能になっている。

  • ③ 「リモートロボ・Typeアビス」
    対象の海洋生物を解析し情報をくれる。

※ずかんくん深海調査ギアは架空の装置です。

今回は、日本国内にある深海エリアへの生物調査の探検に出かけます。
さあ!ずかんくんと一緒に、深海の生物に会いに行きましょう!
合言葉は「図鑑を開こう」。

<三重県の尾鷲灘からはじまった>

ある日、ずかんくんのもとへ知り合いの漁師さんから一本の連絡が入りました。

「いつも漁をしている、定置網の中に見たことない大きな生物が入ったよ。
定置網の中に入れておけないから、船の生簀に移動させたからずかんくん、見に来てよ!」

シーラカンス先生に作ってもらった、瞬時に遠い所へ移動することができる「時空転送装置Pro」を使い三重県の尾鷲灘へ行くことにしました。
漁師さんの生簀を覗き込んでみると、見たことがない巨大な生物の姿が現れました!
とんでもない大きな口をしたサメが入っています!これは「メガマウスザメ」だ!

<リモートロボ・Typeアビス解析>

「メガマウスザメ」
体長5m。
1976年にハワイ沖ではじめて発見され、現在までに世界で約110例、日本では20例ほどが記録されています。世界中の暑いところから暖かいところの海に住み、昼間は深い海にいて、夜になると浅いところまで上がってきます。また、ノドに不思議な模様があり、口がゴム状に伸び縮みします。
この特徴をつかってご飯を食べるのは間違いない!ホホジロザメとも親戚!ネズミザメ目っていうグループのサメです。

さらに、「リモートロボ・Typeアビス」で尾鷲の海に「メガマウスザメ」が現れた理由を解析してみました。
「メガマウスザメ」は黒潮に乗って来遊しているように考えられます。そして、エサにしている生物の動きを追ってというのもあるでしょう。さらに一番の要因として考えられるのは、三重県の海では定置網の設置があるという漁業の有無などの人為的な要因が大いにあるといえます。つまり漁獲努力が「メガマウスザメ」の出現と関係があると考えられます。
「メガマウスザメ」が希少な生物なことには変わりないですが、水深200メートル付近のやや浅い深海に生息しています。
ふむふむ、「メガマウスザメ」の生活するエリアは、深海かと思えばまだほんの入り口に過ぎないようです。
次はもっと深い海の調査へ向かいましょう!「時空転送装置Pro」をくぐります。

<日本最深の湾をもつ静岡県の焼津へ>

2つ目の海としてやってきたのは、国内で一番の深さを誇る「駿河湾(するがわん)」です。有名な深海生物が沢山生息する、深海好きにとっていわば焼津は、聖地のような場所です。
駿河湾は、日本列島のほぼ中心で、静岡県にある湾であり、世界文化遺産である富士山の南側に広がる海です。最も深い地点で水深2,500mになる日本一深い湾です。
水深2,500mでは、水圧が「約25MPa(メガパスカル)」になるため、細い鉄パイプなどは曲がってしまうほどの強い力がかかります。
とても生身の体で調査できる場所ではないので、ここからは「深海調査艇サブマリン6500Plus」に乗り込んで深海生物に会いに行きましょう!
深く深く、どこまでも深く続く海を潜っていきます。
周りがだんだんと暗くなってきました。
前方に生き物らしき大きな影が見えます、探査艇のライトを当ててみましょう。
すると現れたのは、、、、

<リモートロボ・Typeアビス解析>

「カグラザメ」
平均的な全長はオスで3.1m~3.3m、メスで3.5m~4.2m。
最大の特徴はエラが6対※通常、多くのサメは5対。
背びれは体の後に1基あり、印象的なエメラルド色の眼を持ち、特徴的なのこぎりのような歯を持っていて、獲物の分厚い皮膚を切り裂いて食べることができます。
恐竜が栄えた中生代からあまり姿を変えていないと考えられています。

「オンデンザメ」
全長4m。
「オンデンザメ」はツノザメ目のグループに属していて、尻びれが無いのが特徴。
最新の研究では、寿命が非常に長く、体の大きさが5mに達するまで約400年もかかることが判りました。
魚を中心に捕食しますが、アザラシやクジラの肉が胃から見つかったこともあります。
眼には寄生虫「オマトコイタ」が寄生していることが多く、「オンデンザメ」から光を奪います。寄生後に徐々に角膜に損傷を与えて「オンデンザメ」から視力を奪い、やがて暗い世界へ閉じ込めてしまいます。

「オオグソクムシ」
全長4m。
体長約10cm~15cm。
水深200m~650mの砂底域に棲んでいます。
甲冑を着込んだような姿から具足(鎧)を着た虫、グソクムシと名づけられました。
雑食性で深海に沈んだ生物の死骸などを食べて片づけてくれることから「海の掃除屋」とも呼ばれます。

「ヌタウナギ」
名前に「ウナギ」がつきますがウナギの仲間ではなく、にょろにょろとした見た目からついた名前です。アゴが無いため、魚類の仲間とも言い切れない原始的なセキツイ生物。
サメなどの大型な捕食者に襲われた場合は、全身から強力な粘液を出します。捕食者は強力な粘液による窒息を避けるため、たまらず「ヌタウナギ」を吐き出します。これが「ヌタウナギ」の必殺技です。
韓国では高級な食材として、「ヌタウナギ」は食べられています。

「ヨコズナイワシ」
全長250cm以上。
水深2,000mより深い場所に生息する深海固有種として世界最大の硬骨魚類で、まさに「深海のトッププレデター」です。
イワシといっても、私たちのなじみ深い「マイワシ」や「カタクチイワシ」といったニシン目に属する魚とは違い、セキトリイワシ目に属する深海魚です。
まだ2016年に発見されたばかりで皮膚には沢山の寄生虫が付いており、エメラルド色の眼をしています。

駿河湾では、とても多くの深海生物に出会うことができました。
新発見されたばかりの種もいて、まさに深海生物の聖地でした。
深海調査の旅はまた続きます。さらに「時空転送装置Pro」をくぐります。

<駿河湾に続く、神奈川県にある国内深さ2位の深海ワールド・相模湾>

続いてやってきたのは、先ほどの駿河湾に続く、国内2番目の深さを誇る「相模湾(さがみわん)」です。ここも「駿河湾」と同じく非常に珍しい深海生物が多く発見される深海生物好きにとっては聖地のような場所です。神奈川県三浦市にある、相模湾は最も深い地点で水深1,600mになり国内2番目に深い湾です。
小田原以西の相模湾は、岸から離れると急に深くなります。このため、海岸近くでも釣りをするのに十分な水深があります。
相模湾は開放的な湾で、沖合を流れる黒潮の影響を大きく受けます。黒潮に乗って、アジやサバ、イワシ、カツオ、マグロなど回遊性魚類が湾内に来遊します。そんな相模湾は、日本で獲れる魚、約4,000種のうち、約1,300種の魚が獲れ、そのうち約300種もの魚が食べられることができる、とても豊かな海です。そんな相模湾の海を、「深海調査艇サブマリン6500Plus」で潜っていきます。
さあ、ここ相模湾でも色々な深海生物が現れましたよ。

<リモートロボ・Typeアビス解析>

「メンダコ」
深海生物ブームをけん引する大人気生物!
かわいい耳のようなヒレがあるが「タコ」の仲間です。タコなので腕は8本。
大きさは20cmの手のひらサイズ。
普段海底にいることが多いですが、タコらしく「漏斗(ろうと)」をもっていて水を吹き出して泳ぎます。ちなみに墨袋は持っていません。

「ソコボウズ」
アシロ目で最大級の大きさを誇る。体長50cm~100cm。
最大で2mを超す大物もいる。
ヒモのような独特な腹びれは、海底のエサを探す時に役立っている。名前の由来は、深海の底付近に生息していることと、頭部の見た目がつるんとしたなめらかな見た目から、「底坊主(そこぼうず)」と付けられました。

この「相模湾」では、人気の「メンダコ」に加えて、非常に希少な「ソコボウズ」に出会えました。この「ソコボウズ」は、駿河湾で出会った「ヨコヅナイワシ」同様に、発見例が非常に少ない種です。また、「ソコボウズ」は頭部の形が違うものも発見されていて、それらは別種なのではないだろうかという見方もあります。
まだまだデータが乏しいので、これからの研究で解明される成果が楽しみです。

次はいよいよ、大都市「東京」の海!
東京湾の先に深く広がる東京海底谷へと向かいます!
神奈川県から東京へ「時空転送装置Pro」で移動します。

<東京湾の先に広がる秘境・深海鮫ワールド・東京海底谷>

日本で最も栄えている大都市「東京」。東京は開発が進みに進み、他の県よりも残されている自然風景が遥かに乏しい場所です。はたして、この東京に生命溢れる自然豊かな場所が存在するのでしょうか。
それは、東京湾を出た先にある深海エリア。そこに命溢れる深海鮫の王国が存在しています。
では、「深海調査艇サブマリン6500Plus」に乗り込み調査へ行きましょう!
東京湾の浦賀水道を進み、海底谷へ向かいます。水深500メートル以上は潜らないといけません。
最大では約1,000m近くも深さがあり、長さが40キロにも及ぶ巨大な峡谷、それが東京海底谷(とうきょうかいていこく)です。
この海域では、人気の「ラブカ」と「ミツクリザメ」や、尾鷲の海で出会った「メガマウスザメ」、そして強面の「シロワニ」、さらにはサメ界のアイドル「ジンベエザメ」まで実に多くのサメの仲間が見つかっています。
さっそく探査艇の近くにも現れました。

<リモートロボ・Typeアビス解析>

「ラブカ」
最大で2m。ウナギのような細長い体です。
エラが6対。※通常、多くのサメは5対。
一番前のエラは腹側で繋がっていて、まるで襟(えり)のようになっています。
エラの後ろ側は、薄い皮膚が伸びてフリルのようになっています。英語のFrilled sharkは、このエラの特徴からついた名前です。このエラは酸素の少ない深海で少しでも多くの酸素を集めるための工夫だと考えられていて、三つ又状の独特の形をした歯をしています。イカなどをひっかけて食べるのに便利そうです。
大昔に絶滅したサメの生き残りだといわれていますが、現代型のサメが特殊化したものだという考えもあります。「ラブカ」の赤ちゃんはママのお腹に2年以上もいて育ちます。乱獲には非常に脆弱な種と考えられます。

「ミツクリザメ」
最大体長5m。
最大の特徴は突き出た吻端(ふんたん)とその先に迫るほど、勢いよく獲物に向かって飛び出す口。その恐ろしい姿から悪魔のサメ「ゴブリンシャーク」と呼ばれています。
「ミツクリザメ」はエサの少ない深海であまり余計なエネルギーを使わないようにゆっくりと泳ぎます。獲物を捕らえる際は、ゆっくりとした泳ぎを、飛び出す口でカバーしています。
突き出た吻端(ふんたん)にはロレンチーニ瓶(びん)という獲物の体から出る微弱な電気を感じ取る器官が広がっています。

東京海底谷で、ついに「ラブカ」と「ミツクリザメ」に出会うことができました。まさか、大都市「東京」の、眼前に広がる海に、世界的にも珍しい深海ザメが生息しているなんて、夢にも思いませんでした。
さらに、「リモートロボ・Typeアビス」に東京湾近くの深海に多くのサメが生息している理由を解析させてみました。その結果、この海域は河川から流れ込んだ有機物が沈殿して栄養豊富な深海が広がっていて、小魚が多く集まります。その小魚を求めて中型の魚が集まり、さらにサメなど大型魚類も多く生息できる環境になったのです。タンカーなどの大型船が頻繁に航行するため、漁船が操業しづらくなっていることも、サメのエサが豊富に残る理由の一つになっています。
深海調査の旅はまた続きます。今度は太平洋を離れ、日本海へと向かいます。
では「時空転送装置Pro」をくぐりましょう!

後編へ続く

(参考文献・引用書籍)
・特別展「海」生命のみなもと 図録(NHK NHKプロモーション 読売新聞社)
・特別展「深海2017」最深研究でせまる生命と地球 図録(NHK NHKプロモーション 読売新聞社)
・国立科学博物館 地球館ガイドブック 地球生命史と人類~人類との共存をめざして~
(独立行政法人国立科学博物館)
・小学館図鑑NEO 魚(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本魚類館(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本の深海魚類館(小学館)
・ポプラディア大図鑑WONDAアドベンチャー 魚(ポプラ社)
・ポプラディア大図鑑WONDAアドベンチャー 深海の生物(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 魚(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 魚(講談社)
・講談社の動く図鑑move 深海の生きもの(講談社)
・海の底を空想散歩 体感!海底凸凹(技術評論社)
・深海がまるごとわかる本(Gakken)
・深海と深海の生物 美しき神秘の世界 水深1万1000mまでの謎を解く(ナツメ社)
・深海生物大百科(Gakken)
・深海生物大事典(成美堂出版)
・世界に一つだけの深海水族館(成美堂書店)
(2025年10月)