連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
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はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第20回 ずかんくんコラム 
「シャチ」

「シャチ」

はじめに

海洋生物コラムも連載20回を迎えました。今回は記念回として、海洋生物の中でも特に人気の「シャチ」をテーマにご紹介していきたいと思います!白色と黒色のパンダカラーが人気のシャチですが、可愛いだけではなく、海の生態系の頂点に立つ、王者の顔も解説していきます!

はじめに

<日本国内でシャチに会うことはできるのか??>

シャチは北海道・知床などで観察することができます。北海道の知床半島と須走エリアは、壮大な自然と豊かな生態系を誇る、日本屈指のホエールウォッチングスポットです。知床はユネスコの世界自然遺産にも登録されていて、手つかずの大自然が広がり海洋生物の多様性に恵まれた場所です。
6月~9月まで会うことができます。

<シャチの名前の由来>

「和名」シャチ
逆立ち→シャタイ→シャチになった説があります。「シャチ」の名前の由来は諸説ありますが、中国の空想上の生物である「鯱(しゃち)」から来ているという説があります。
鯱・・・頭はトラで、体は魚の形態をしている

「学名」Orcinus orca(オルキヌス オルカ)
意味は「冥界からの魔物」
「英名」Killer Whale(キラーホエール)
直訳すると「殺し屋クジラ」他のクジラの仲間や、アザラシ、ペンギンなどを食べるところから由来。
「別名」サカマタ(逆又)・・・シャチの背中には大きな突起物があり、これを逆さのホコに見立てて、別名サカマタ(逆又)といいます。

<誰もが存在感に圧倒され、海洋生態系頂点に立つシャチ!知られざる生態を紹介>

「鯨偶蹄目・ハクジラ亜目・マイルカ科・シャチ属」に分類されます。
(オス)最大体長9.8m 最大体重約10t 寿命50~60年
(メス)最大体長8.5m 体重7.5t 寿命80~90年

シャチは極めて高い環境適応能力を持ち、北極や南極といった冷たい海から、赤道域の温かい海まで世界中に住んでいます。それぞれの海域に見事に適応し、ニシンやサケといった魚やイルカ、アシカ、アザラシなどを食べています。ときには自分より大きなクジラを襲って食べることもあります。
世界中の海に住み、遊泳速度は60~70km/hで最大80km/hに達します。
狩りをするシャチを分かりやすく例えると高速道路を走る大型トラックです。クジラまで襲うシャチはまさに海の王者です。

<シャチは実は1種ではない?!>

シャチは世界中の海に住んでいますが、実は10程のタイプに分かれています。
しかし現在、種としては「シャチ」のみです。
生息地によって遺伝的に異なるいくつかのタイプに分けられ、体の特徴や食べるものにも違いがあります。これらが亜種や別種になるのではないか、という議論もあります。

<シャチの体のヒミツ>

海の水面は空から見ると黒く、海中から見上げると太陽の光で白く見えます。
シャチの白黒模様は「分断色」と呼ばれています。シャチが群れでいると、どこからどこまでが一頭の個体か分かりづらくなり、敵の目を欺きます。敵から認識されにくくなることで、身を守ることに繋がっているのです。
狩りのときにも、もちろん役立ちます。見えにくいように白く海へ溶け込むことで、獲物に気づかれずに近づくことができます。

<チ-ト級のシャチの狩り能力>

シャチは非常に頭が良いため、高度な狩りを行います。

「超音波で攻撃」
シャチもイルカ同様に超音波の力を水中で巧みに使いこなします。
なんとシャチは獲物に凝縮した超音波を当てて、相手の三半規管を惑わせ、麻痺させてしまいます。

「仲間とのチームプレイ」
仲間とのチームプレイで、氷の上にいるアザラシに尾ビレで立てた波をぶつけ、氷が割れたり、氷から落ちたりしたところを捕食することがあります。

「悪魔の知恵」
捕まえて弱った魚をオトリにして、寄ってきた鳥を食べることもあります。

<家族で暮らす>

シャチは母親を中心とした母系家族で暮らしています。
メスのシャチとその仲間たち、場合によっては孫たちと暮らしています。
オスは成熟すると群れを出ていくことが多いようです。
メスの方が長く群れに留まるため、狩りの仕方や鳴き声といった文化はメスを中心に受け継がれていきます。

<シャチの赤ちゃんの成長>

(シャチの妊娠期間)シャチの妊娠期間17~18か月

  • ・シャチの赤ちゃんは体の白い模様の部分が、オレンジがかっています。
  • ・シャチの赤ちゃんは尾ビレから産まれることが多いですが、反対の頭から生まれることもあります。
  • ・無事に生まれたら、赤ちゃんはすぐに泳ぎだし水面へと向かい呼吸を行います。
  • ・赤ちゃんはお母さんからお乳をもらいます。飼育下では授乳までに2日かかった記録があります。
  • ・生後1か月頃から皮膚が剥け始め、次第にオレンジがかっていた部分が白くなっていきます。
  • ・生後60日頃からエサの魚に興味を持ち始め、ときには魚を口でくわえて遊ぶようになります。
  • ・生後4か月頃にエサの魚を食べ始め、生後1年半が過ぎたころには多いときで20kg食べるようになります。

<アルゼンチン・バンデス半島のシャチの親子>

シャチは、勢いをつけて体を浜に乗り上げ、波打ち際で遊ぶオタリア(南アメリカに住むアシカの仲間)、を襲った後、体を反転させて海へ帰ります。
母親のシャチは自分の子供に、オタリアの子供がいないときにも体を浜に乗り上げ、無事に海へ帰るための練習をさせます。

<シャチたちのさまざまな暮らし>

「魚ばかり食べるシャチ」・・・カナダ、アラスカの沿岸には、春から秋にかけて、サケやマスの仲間が大群で押し寄せます。
そして、このサケやマスを中心に魚ばかり食べるシャチが住んでいます。彼らは、サケやマスの群れが多い海域に留まることが多く、絆の強い家族群で一緒に移動したり、魚の群れを追ったりして過ごします。

「イルカやアザラシを襲うシャチ」・・・アラスカやカナダの太平洋岸には、イシイルカやネズミイルカ、ゼニガタアザラシが多く住んでいます。これらの哺乳類を襲って暮らすシャチは、魚ばかり食べて暮らすシャチに比べてもっと広い海域を行動圏にしています。

<南極海のシャチたち>

近年、南極海には5種類の異なった暮らしをするシャチたちが住んでいることが分かってきました。彼らはお互いに交流を持つことなく暮らしています。こうした状況が長く続けば、別の種と考えられるほどに、お互いの違いがさらに強くなっていくかもしれません。

  • ① 「タイプA」・・・南極大陸周辺の、氷に覆われない広い海域を泳ぎまわりながらクロミンククジラなど大型のクジラを襲って暮らしています。
    見かけは世界中の海で広く見られるシャチに似ています。
  • ② 「大型のタイプB」・・・海に浮かぶ氷の間を泳ぎまわりながら、氷の上で休むウェッデルアザラシを中心にアザラシ類を襲って暮らしています。
    アイパッチ(眼の後ろの白い模様)が非常に大きいのが特徴です。
  • ③ 「小型のタイプB」・・・アイパッチが大きいために「タイプB」と名づけられていますが氷の少ない場所で、ジェンツーペンギンやヒゲペンギン、魚類を捕らえて暮らしています。
    南極半島西側によく現れます。
  • ④ 「タイプC」・・・南極大陸に大きく入り込んだロス海を中心に住み、魚ばかり食べて暮らしています。
    他のシャチより小型で、アイパッチが細く後方につり上っているのが特徴です。
  • ⑤ 「タイプD」・・・南極大陸から遠く離れ、南緯50~60度あたりの海域で目撃されるシャチですが、観察例が少なく、その暮らしはまだ謎に包まれています。
    額の部分が大きく丸く突き出し、アイパッチがきわめて小さいのが特徴です。
  • 「引用」名古屋港水族館 館内解説展示より

(最後に)

今回、広い海の王者シャチという生物の恵まれた能力をご紹介してきました。
無敵の力を誇るシャチですが唯一の天敵が、実は私たち「人間」です。
北大西洋全域のシャチを対象に「残留性有機汚染物質(POPs)」が皮下脂肪に存在するかどうかを調べた研究があります。この汚染物質はシャチの免疫機能を弱め、内分泌機能を乱し、成長と脳の発達、さらには繁殖を妨げてしまいます。この汚染物質は工業や農業に由来します。そう、原因はまぎれもなく私たち人間の活動によるものです。
自然社会は食物連鎖で構成されていて、食物連鎖の上位にいくほど比例して汚染物質は生物の体内に増えていきます。このように、シャチは広い海の中で頂上捕食者という地位であるがゆえに、最も汚染物質の悪影響を受けてしまうのです。
シャチと私たちのつながりを深く知ることで、海洋生物と私たちの共生・共存の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。

・名古屋港水族館 館内解説展示
・世界のクジラ・イルカ百科図鑑(河出書房新社)
・クジラ・イルカのなぞ99(偕成社)
・クジラのおなかからプラスチック(旬報社)
・小学館図鑑NEO 動物(小学館)
・ポプラディア大図鑑 動物(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 動物(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 動物(講談社)
・TRAVEL ROAD 小笠原ツアー (webサイト)
・国立科学博物館 海棲哺乳類データベース 海棲哺乳類図鑑(webサイト)
(2025年4月)